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 21世紀初頭、極東では若い世代を中心にとある「病気」が蔓延していた。
 「若年性妄想感覚誤認症候群」「ジャーニーズ・ハイ・シンドローム」等と呼ばれる、人と違う感覚で「何か」を感知しているように感じてしまうという「病気」
 一般にはゲーム脳や思春期特有の妄想の行き過ぎだといわれていた。
 しかし、同じ感覚を持つもの同士が同じような「何か」を感じ取ったり、その感じた「何か」によって影響される、またはダメージを負わされるといった症例が現れるだんになって、政府や関係各所も重い腰を上げる事になった。
 そしてアニメやゲーム、出版物などに厳しい規制が掛けられ、「患者」と判断された者達は、ある地域に半隔離され監視された。 それらの施策によって、何かしらの感覚を獲得したという者達は表に現れることは無くなった。 しかし、それは隠れただけで消して消えた訳ではなかったのだった。

―――――2007年7月

 「患者」達を集めていた学園での集団失踪事件を皮切りに、若年層の失踪や変死、失踪者に似た者による手段不明の破壊事件などが相次いだ。
 これらは次第に範囲を広げ、一年の間に世界を混沌とした物に変化させていった。

―――――2008年7月

 ある、IRCにおいて。

#ルル   なあ、カヅマの事、聞いたか?
#若社長  カヅマさんがどうかしたんですか?
#ルル   あの馬鹿死んだらしい。
#若社長  はぁ? 一体どういう事ですか?
#ルル   あいつ、「俺、風の精霊王に認められたんだ」とか言ってたろう。
#若社長  そういえば、そんな事を……言ってましたね。
#ルル   それで、「今から契約する」とか言った直後に失踪したらしい。
#若社長  ああ、ありがちな……でもそれだけで死んだというのは
#ルル   まだ先があるんだ。
#ルル   失踪した翌日、カヅマの奴の凍らされた死体が、全裸で空から自宅へ降ってきたらしい。
#若社長  それ、「風の精霊王」なんかじゃ無くて「旧支配者」かなんかでしょう!!
#ルル   どちらにしろ、また中二病の犠牲者が出たというわけだ。
#若社長  しかし、そのソースってどっから出たんです? 信憑性は?
#ルル   カズマだよ。
#若社長  なるほど。
#guest が退出しました。

―――――――

「ふう」

 マウスを操作して、IRCのチャンネルから退出する。

「あそこの固定ハンドルは全員が中二病って話だけど、
 新しい連中の入れ替わりが激しいな」

 右手で指折り数えつつ、最近消えた名前を上げてみる。
 4回ほど折り貸した所で止めた。

「……世の中には死亡フラグが多い」

 中二病という奴に掛かると、今まで見えなかったものが見えるようになる。
 それらを綺麗に言うと「新たなる可能性」「英雄への道」「運命」「果たすべき使命」と聞こえは良いが、ぶっちゃけてしまえば「死亡フラグ」となる。
 こういう俺も、うっかり死亡フラグを踏んだ口だが、幸いにも危険を脱する事ができた。
 うまくやったわけではなく、イレギュラーでうまく脱落できたというべきか。
 種類とすると、いきなり選ばれて異世界へ飛ばされる系だったのだが、大体この系統は世界の違い故の価値観の差から、得る物が少なく苦労が多い上に切羽詰った戦争だのに駆り出される率が非常に高く、更に元来の世界へ帰る事が非常に困難という最悪に近いパターンが報告されており、(このパターンにあたった報告数「行って来ますメッセージ」)対(帰りついた報告数「ただいまメッセージ」)の比が数百対2~3という事からも第一級の死亡フラグであるといえる。
 帰り着ければ色々と得た物を活かせるというが、戦いの力を一般世界でどう使うのか、非常に不安だ。

「エスさん、お茶ー」
「はい」

 中二病のパターンの中には、何かに取り付かれる系の場合もある。
 この場合、取り付いた相手の性格・性質によって死亡フラグかどうかが決まるが、メリットデメリットのバランスが取れている事が多い為に、あえて踏みに行く連中も多い(相手が魅力的な異性の姿をしている場合が多い為に地雷を踏む連中は後を絶たない)が、相手の能力に存在を欺瞞するものが無いと、社会的に色々と困る事が起きている。

 お茶を飲んで、お茶を持ってきたエスさんを眺める。

「どう見ても俺の親戚には見えないな」

 現在進行形で俺も困っている。

「あの……もしかして、私はご迷惑では?」

「いや、そういう訳では……流石に命の恩人を無碍にはしませんよ」

 そうなのだ。
 この長身を身の置き場に困ったように縮こまらせている女性こそ、俺が中二病を発揮して踏んだ死亡フラグからの救い主にして、次なる死亡フラグそのものなのだ。
 あれはもう一月程の前の話になるか……。

――――

 バイトからの帰り道、道の端にゴツイ装丁の赤茶けた本が”居た”。
 落ちてるとか置いてあるとか台に飾って安置しているとかじゃなく、ここは私の居る”場所”だ。 邪魔だからお前らごときは寄るな触るなと周囲にプレッシャーを撒き散らしていた。 実際近寄るものは無く、その近辺には人通りのエアポケットが出来ていた。 そんなものをふと見つけてしまって、俺は好奇心より先に恐怖が立ち、目がそっちに行ってしまうのを懸命に押さえつけて、前を向き、家に帰ろうとした。 そしてそれは何とか成功して、意識をそれから逸らす(というよりは引き剥がし)通り過ぎようとしたのだが、逆にじっと見られてしまった。 見られた事に気づいてしまった。 この時点でも、何も無いように通り過ぎてしまう、ないしは走って逃げれば良かったのかもしれない。 しかしそれは出来ず、舐めるようにこちらを伺うその視線――目は無いくせに――のせいで、一瞬怖気に足を止めてしまった。
 次の瞬間、こちらが自分に気づいていると確信したのか、怪しいプレッシャーが消え、逆に誘うような引力が襲い掛かってきた。 値打ちものだから拾わないと、きっと拾えば良い事があるに違いない、何か新しいことが始まる予感がする、退屈な日常に風穴を開ける何かが始まるんだ、今の自分は本当の俺じゃないんだ、あれを拾えば何かが自分を迎えにやってくるんだ、本当の自分に帰ることが出来るんだー等という想いが、自分の意識から生まれたかのような顔をして湧き上がってくる。 幸運というか不幸というか、俺はそれらに異物感を感じることができた。 俺は今の生活が割りと気に入っていて、何かが変わる事が一番のストレスなのだ。 だから新しい事を始めるにしても、そう負担になることはしない。 単に知識欲の欲求を満たす程度なもので趣味が増えるくらいのもの。 それをGENKAI・TOPPAしたりCHANGE・THE・WORLDしたりしてまで、生活のリズムを変えたりする訳が無いと、自分に言い切ることが出来たのだ。 まあ、そう言い切れても、体が勝手に本に向かって行くのを止められなかったら、素の自分のまま死亡フラグ踏みに行くのを実感する訳で……。

「やめろーうわーいやだってば」

 騒いでも誰もこっちを見てくれなかった。
 俺は自分に中二病が発現しても「俺は自分を保っていられるぜヘイヘイ♪」とか思っていた。
 確かに自分を保つこと”だけ”は出来た。
 だが、まさかこんなに無理やり地雷を踏ませようとする力が強いなんて思ってませんでした。
 そして本を手に取り、何かが繋がったその瞬間から、自分の中にある社会の繋がりというか、世の中においての己の立ち位置というか、この世界の自分というものが何か薄れて書き換えられているような気がした。
 さらに脳裏に何か見た事のない荒野のイメージが湧き上がり、なぜかそこに懐かしさを感じてしまう段になって、「まずい、これは異世界トリップ系……これは、俺死んだか?」と死を恐怖した。
 俺は心の中で「ツンデレ要らない。 ナインペタンも要らん。 ロボットには乗りたくないし、剣も使いたくない。 ルーンも要らない、魔法も使いたくない。 戦争は真っ平だし、内政もしたくねえ」と繰り返し念じていた。 それが功を奏したのか単なる偶然か、情報の書き換えの速度が鈍ったような気がした。 もしかして、今念じていた項目に何か当てはまったりしてたのだろうか? だが抵抗もそこまでで、更なる圧力を呼び起こしただけだった。 俺は自分というものが自分ではない何かに書き換えられている事に恐怖しながらも、何も出来ないでいる事に一番の恐怖を感じ、それが早く終わるのを願うようになっていた。 少なくとも終わればこの恐怖も何も感じなくなるだろうと「さっさと殺せ」状態で歯を食いしばっていた。 だが、時間感覚がおかしくなっているにしても、終わりが来るのを感じることはなかった。

 ふと、いつの間にか、気がつけば見慣れた部屋にいるのが判った。

「あれ? 夢?」
「いえ、違いますよ」

 返って来るとは思っていなかった答えに目を向ける。

「幸い、私の介入が間に合ったようで良かったです。
 私も貴方のおかげで楽に蒐集が済みましたので、オアイコというのでしょうか?」

 可愛らしく小首を傾げながら、そんな事をのたまう女性は、黒スーツに身を包んで、柱を背に片ひざ立てつつ優雅に俺のクッションに腰を下ろし、左手でゴツイ本(俺が引っ張られてた本だ)を開き持ち、右手の万年筆で何かを書き込みながらウムウムと満足げに頷くと、ぺりり、パクリ、ムシャムシャとページを喰っていた。
 は? 何かおかしい所があったか?
 ぺりり(ページを破り)パクリ(ページをくわえ)ムシャムシャ(食べる)……ああ、ゴクリと飲み込むのを忘れていた。
 いったい何がどうなってるのかは俺も知りたいので少し待ってほしい。

「一体? 何が?」

 俺が首をかしげると、女性は居住まいを正してこちらに向き直った。

「私は俗に”黒の書”と呼ばれるモノです。 そしてこれは”赤の書”」

 ”黒の書”と名乗った女性は食べ掛けの赤茶けた本をかざして見せた。

「私は時折この世界に来訪する”赤の書”を狩集め蒐集する事を目的としています」
「”赤の書”って、一体?」
「貴方を浚おうとした事でも判るように、異世界干渉の為のプローブ。
 ある種の端末といった所でしょうか。
 これらは異世界の本体が、こちらの世界に適合できる情報だけを切り離して、活動させているものなのです。
 本来の目的は異世界の情報を得る事のはずですが、まあ元が道具として作られたものですから、違う用途で使われても仕方がないといえば仕方がありません」
「もしかして、本体って」
「ええ、私と同じく”黒の書”と呼ばれるものです。
 私を作った存在の異世界での相対存在が創り出したもので間違いないでしょう」
by katuragi_k | 2008-07-28 20:48

aaaaa

 西暦1999年7月、この世界は降って涌いた「恐怖の大王」ならぬ異文明の巨大構造物と、それを追う更なる異文明の戦いにさらされ、大いなる転機を迎える事となった。 その中でも前述の戦いの余波により引き起こされた魔力活性と呼ばれる現象は、過去想像上の産物でしかなかった魔力と呼ばれる物を、確固足る技術体系により利用可能な資源とし、この十年で世界を様変わりさせる原動力となった。

 そして2009年、第197半管理世界と呼ばれるようになった世界は、特に混乱もなく新しい物を取り入れ、終末を感じさせていた幾つかの危機をそれら新しい技術で解決し、多数の異世界というものを認識した為に国という縛りも緩やかに解かれつつ、新たな世紀をそれなりに気楽に迎え繁栄していた。


「エス、エセル、エセルドレーダ!!」

 一哉が玄関から大声で名前を呼ばわると、家の裏手から真っ黒な大型犬がスタスタとやってきて、一哉の前にちょんと座ると一哉に向かって視線を向けながら、「何?」とばかりに小首をかしげた。

「何じゃないだろ……」

一哉は溜め息をひとつ。

「これはなんだよ。
 玄関のまん前にこんなのが突っ立ってたら邪魔なんだよ。
 どうせ、エスの同類だろ、何とかしてくれないかな」

 一哉が指で示す先に、大きな杭というしかない代物が突き立っていた。
 材質不明の質感をした黒い直径5センチほどの芯を中心に赤黒い刃物じみた突起が周りを囲んでいる。 高さはおよそ2メートル半。 そんなものが、家の玄関前に突き立っていると、まさに邪魔である。

「……」

 それを見た黒犬の反応はといえば、無言で呆れを表すという、割と分かり易いものだった。
 黒犬=エセルドレーダは杭と一哉を交互に見やり、溜息を器用にひとつついて、その体をひょいと伸ばし、後ろ足で立つと身をひねって姿を変じた。
 一瞬後にそこに立つのは、黒と白のモノトーンが印象的な長身の女性。
 黒尽くめの衣装に黒髪黒瞳、白い肌の一点だけに赤い唇。
 そこに浮かぶ表情はやれやれといった風情で、厄介事を次々投げてくるのび太を見るドラえもんのようだった。

「ひとつ言っておきますが、別に私が厄介事を引き寄せている訳ではありません。
 あくまでも原因はあなたに取り付いた特質です。

 
by katuragi_k | 2008-07-14 21:49

ブレイクエイジのパクリを目指して(D)

「はい、1,2,1,2」

 黒い機体の一団が、電子空間に描かれた大地をランニングしている。

「あのー。 先生、地味……」
「バーッと飛んじゃだめなんですか?」

 流石にランニングに飽きたのか、隆にそんな言葉が聞こえてくる。

「ハイ、注目。
 まず皆さんに覚えてほしいのは、人型の機械なんて物ががうまく飛ぶ訳がないってことです。
 ぶっちゃけると高機動ユニットっていうのは爆発で吹っ飛ばされながら移動しているようなものですから、早々コントロールが利くものではありませーん。
 では、どうすれば良いかというと?
 歩きましょう。
 とりあえず、曲がる時と止まる時、攻撃する時は地面に立つことが基本です。
 空中で攻撃目標に相対しながら回避しつつ射撃なんていう変態さんは日本に数人で十分です。
 皆さんはまず地面での移動と方向転換、そしてバランサーの挙動を覚えていただいてから、その後で泣くほど転げまわっていただきます」

 妙に嬉しそうな隆の声に、生徒一同の心中に不安が沸きあがった。

――――――――――――

「うわきゃああああああああ」

 ごろごろごろごろごろ。

「ひぃーやああああああああ」

 ゴロゴロゴロゴロゴロゴロ。

「とーめーてー」

 ゴロゴロゴロゴロゴロゴロ。

 隆のコクピットに黄色い悲鳴が響き渡っている。

「はい、落ち着いて背部ブースターのスロットルを戻してください。
 因みに急に戻すと今度は足からすっ飛ぶことに「ひーやーああああああ」」

 隆が右手で顔面を覆った。

「はい、皆さん結構痛い目にあったと思うので、簡単なセッティングの仕方を教えます。
 先ほど転げまわったのは、背部と脚部のブースターの出力のバランスが取れていなかったせいですので、機体のプロパティの中の背部ブースターと脚部のブースターを引っ張ってきて、操作レバーのスロットル1に関連付け、それにバランサーの制御をリンクしてください。
 これで、先ほどのバラバラだったスロットル操作をレバー一つで行えるようになり、機体の姿勢等での加減を自動でやってくれます」

「先に教えてくれていれば良いのに……鬼」
「しくしくしくしく、きぼちわどぅいよう」
「どうして最初からこういう風になってないのよう」

「先ほど話しましたが、日本で数人の変態さんは、わざと転げ周るように仕向けて機体を宙返りさせたり、敵の攻撃を回避したりするのです。
 そういう事ができるようになっているのが、ミッシングウォーの醍醐味であり、カテゴリ3以上の真価でもあります」

「「「はーい」」」

「それじゃあ、残りの時間は自由に動いて貰ってもかまいません。
 思う存分にやられて下さい。
 復帰の仕方は大丈夫ですね」

「「「ありがとうございましたー」」」

 そして隆以外の黒い機体は思い思いの方角へ飛んでいく。
 それらを見送りながら、「何気に三十分で基本の移動覚えるって、さすがお嬢様学校は賢いなーというべきか、俺スゲーというべきか……うーん」 隆は考え込んでしまった。

―――――

 そのころ、圭と綾は口論しながら破壊を振りまいていた。

「だから、まず機動力ありきっていうのがどうかと思うんだって」

 ジャラル・アクスの右腕部に装備されている340ミリ4連バーストライフル砲が、飛行形態のワルキューレを大破させる。

「大体、戦闘前に目立ってどうすんだよっての!!」
「い、いきなりなんだぎゃああ」

 きりもみで地面に突っ込んだワルキューレが爆発した。

「そりゃステルス性は必要だけど、隠れてじっと待ってるなんて非効率的!!」

 アーリヤ・エールの赤い機体が右腕に装備したプラズマブレードを振るい、オープンチャンネルから垂れ流しの口論に何事かと動きの止まったインフィニット・カリバーンを唐竹割にする。

「あんたら、いったい何を「広い範囲をカバーできる機動性がだいいちなのよ!!」ぎゃああ」

 陸戦機体特有のごついフレームが綺麗に二つに分かれて爆発する。

「わざわざ多対一に持ち込む方が非効率的だ!!」

 ジャラル・アクスの120ミリ重機関砲が、近くを飛んでいた黒い機体を叩き落とす。

「あ、綾さーうきゃああああ」

「そこを何とかするのがパイロットスキルというものじゃない!!」

 アーリヤ・エールの肩部ミサイルポッドから20発の近距離制圧用マイクロミサイルが黒い機体に叩き込まれた。

「ちょ、あ、あやさはーん!! ひどーい!!」

 黒い機体が爆散した。

「「あれ?」」

 何か聞き覚えのある声に圭と綾は我に返ったのだった。



覚書

 ワルキューレ:WAR・CROSS登場の飛行形態・格闘戦形態・中関形態に可変可能な戦闘マシン。
 インフィニット・カリバーン:DOLLS・BACK登場の車両形態からロボット形態へと可変する陸戦機体。
by katuragi_k | 2008-07-13 20:22 | SSもどき