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発端A 事務所にて

前書き:
 はじめましての方ははじめまして。
 ZERO見てくれた方はお懐かしゅうございました。
 とりあえず、ZEROあげて2時間、モジモジしながら見てたら、続ける事を許してやろうとコメントを一つ頂いたので、早速……モソモソ書き始めたの3/12の5:53頃。
 
 皆さんの今ごらんになられてる時間がどれくらいか、少し楽しみです。
 
 さて、ご注意です。
 このお話は、東方キャラクターのイメージを損ねるかもしれません。
 あるいは、お好きなキャラクターの扱いにお怒りになられるかもしれません。
 
 基本的に、ボコラレルのは主人公側ですが、突発的にキャラクターが中二的発作を起こす場合があります。(るみゃに勝てないからと目玉ねらって泣かすとか)
 
 皆様のお怒りは真摯に受け止めますので、遠慮なさらずに叩きつけてください。
 
 それでは、
 
 刷り込まれて幻想入り
 
 1話 時が来た。
 
 はじまります。






 再開発から取り残された、5階建てのペンシルビル。
 その中でも、窓外の30cm向こうに隣のビルが聳え立つという、全く日の光が入る余地の無い、最大のお買い得物件の事務所。
 薄暗くガランとした印象の其処に、格好だけ応接セットを置きました(拾い物でもまだ使えるんですよ)と言わんばかりの、種類の揃っていない調度。
 そんな場所で、既に張りの無いソファに腰掛けて、黙々とメモを取っているのが私。
 この事務所の主で、名を”外泉 赤”といいます。
 けして、”ミトイズミ”でも”あかちゃん”でもありません。
 ”ソトイズミ セキ”です。
 そんな私の様子に、落ち着いている場合じゃないだろう!! と憤慨している、見るからに仕立てのいいスーツを着た恰幅のいい壮年の男性。
 某有名商社の専務取締役であり、依頼人の垣家 重三氏。
 そして、その垣家の部下で、いきり立つ上司をなだめつつ、私に事情の説明をしているのが、大迫 健一氏。
 もうかれこれ1時間半ほど、私が質問、垣家氏が憤慨、大迫氏が消火&応答というサイクルが、繰り返されている。
 思うところが有ってしつこくやっているのだが、いい加減うんざりだ。

「それで、もう一度確認ですが、お嬢様が消えた当日のご予定で、確実に確認できている最後の時間というのは?」

 一番最初の確認をもう一度。

「夕方、16時頃にヘアサロンを出られるまでは間違いなく」

 流石に三度目の質問、答えも即座。
 一応「夕方16時、ヘアサロンで足取りが途切れる」 と、メモを取る。

「それでは、お嬢様が何かトラブルに巻き込まれる要因に何か心当たりは?」

 これも三度目の質問。
 もうだんだんと、垣家氏のテンションが爆発方向に上がっていくのが見えるが、それはスルー。
 そして大迫氏に問いかける。
 流石の大迫氏も、もうんざりしてきているのか、垣家氏ののフォローがおざなりになっている。
 そろそろかな? と思っていたら、キッチリ垣家氏が爆発した。

「それが判っていれば、こんな所には来ておらん!!
 大迫君がどうしてもというから、わざわざ足を運んでやったというのに!!
 なんだ、この若いのは!!
 これではそこらの興信所の連中の方が、余程に気が利いておるわ!!」

 全くもって尤もだと、塔の私が頷いた段になって、垣家の顔は真っ赤に湯気を噴いていた。

「せ、専務、それに外泉さんも何を!!」

 私は非難じみた視線を向けてくる大迫氏に、いえいえ本当にご尤もな話ですと頷き返し、垣家氏には、お帰りはあちらとばかりに、出口を示して返した。

 そんな私の様子に言っても無駄と感じたか、大迫氏は垣家氏の説得に奮闘しているが……。

「垣家さん、いえ専務。
 こちらの外泉さんは、本当に信頼の置ける知人からの紹介で」

 やはり、火の着いた垣家氏は収まらなかった。

「ええい、まだいうか!!
 神隠しなんぞ、あるわけが無かろう!!
 ここでこうしている間にも、娘は、娘は……。
 ええい、こんな所でじっとしていられるか!!
 大迫君、ここは君に任せる。
 わしはもう一度心当たりを探して回る!!」

「ちょ、せ、専務!!」

 垣家氏は、足音高く事務所を出て行った。
 どうやらこれで、気の重いサイクルは途切れたようだ。
 だが、流石に大迫氏の顔はどんよりしていた。

「専務も、普段は温厚な良い方なんですが、お嬢様の事になると……」

「こんな胡散臭い所にも足を伸ばしてみようと?」

「……まあ、そういう事です。
 あ、でも私は外泉さんの事は消して胡散臭いとは。
 信頼できる知り合いから、若いが力のある本物だと聞かされています。
 ですから専務の事で、お気に触ったのでしたら」

 私は頭を下げようとする大迫氏を手で制して問いかけた。

「別に大迫さんに頭を下げてもらう必要はありませんよ。
 実際、胡散臭いですからね、垣家氏のおっしゃることは尤もです」

 それが普通なんですよと呟いて、私は本題に入ることにした。

「大迫さんに、いくつかお聞きしてもよろしいですか?」

「結構です、先程のような事でしたらいくらでも」

 先と違う、私の様子に何かを感じたのか、大迫氏はソファに座りなおし、私の顔を正面からじっと見つめた。
 そんな大迫さんに、私はふっと顔を緩め、そんな大した事じゃないんですけどね、と切り出した。

「どうして、私の所に?」

「いえ、先ほども言いましたが、知り合いからの紹介で」

「ふむ、言っては何ですが、私は実際かなり胡散臭い部類でしてね、こういう件に紹介するような知り合いは思い当たらないのですよ。
 というか、私を紹介するような連中は、そういう仕事の頼み方も教えるんですよ。
 そして、私が神隠しには手を出さないって事も知っているんですよ。
 まあ、本当に偶然にどんな心霊屋でもいいから、という方かと思って、くどい事をしてみたりしたんですが」 

「……まさか、先程の繰り返しはわざと?」

「ええ」

 私は大迫氏のに眼に浮かんだ、懐疑と微かな怒りの色を見ながらアッサリと答えた。

「で、ですね。
 そうしてみると、垣家氏は必死ながら信じてはいない。
 貴方は信じているが、冷静すぎる。
 普通なら、むなぐら掴んで何とかしやがれってとこですよ?」

 大迫氏の表情が固い。

「だとすれば、おかしいんですよ。
 私をそこまで信用できる程の根拠があって、私への符丁もルールも知らない。
 必死の偶然にしては信じていない。
 だとすると、答えは……」

「なんですか?」

「私の胡散臭さを信じて依頼してきた……そう考えるのが、私には納得しやすいですね」

「どういうことですか?」

「失踪なんていうのは、そうそう上手くいかないんですよ。
 上手く行ってしまうのは、綿密な計画の犯罪か、物凄く運の悪い事故か、あるいはなるべくしてなった神隠しか、後は狂言・自演くらいなもんですよ」

「何が言いたいのか、よく判りません」

 大迫さんの顔色が悪くなっている。

「察する所、垣家氏のお嬢様って、ご婚約前だそうですが、お嬢さんは余り乗り気ではないのではありませんか?
 それで婚約を解消するに、事件性のある失踪などでは、お嬢さんの傷も大きくなるし、会社も大変でしょう。
 その点で行くと、ここの所の大量失踪事件、神隠しって奴に紛れてしまおうという考えは、馬鹿馬鹿しくは有りますが悪くは有りません……誰のアイデアですかね?
 犯罪に巻き込まれて傷物よりも、神隠しに巻き込まれて気味が悪いって方が、噂的には大きくなるでしょうが、傷は小さい。
 ああ、犯人もいりませんしね。
 だとすると、私の役どころは、都合の良いように言う事を聞く、インチキ神霊屋って所でしょうか?
 どうですか? 大迫さん」

 顔面蒼白の大迫さんだったが、私の推理披露を聞いて、唐突に笑い出した。

「これは参りましたね。
 まさか、あなたが本物だとは……っていうか本物っているんですか。
 いやはや、あなた普通に探偵でもやったほうがいいのではないですか?」

 いや、やってますよ……一応ここ、表向きはモグリの探偵なんですが。

「で? 私の事を垣家さんに話されますか?
 黙っていてくれるならそれなりの口止め料は支払いますし、
 無論、協力してくれるなら、更に謝礼も弾みますが?」

 吹っ切れたのか笑顔の大迫さん。
 顔色も良くなっている。

「いえ、態々あなただけになるまで待ったのは、ただの興味だけですから。
 あなた方に関わる気はありませんし、今日は相談料の五千円で結構ですよ」

 大迫さんは私の言葉を聞くと、そうですかと言って、少し残念そうにして、事務所を後にした。
 貰った封筒には、相談料の十倍ほどが入っており、私の今日の晩ご飯は豪勢になりそうだった。
 そういえば、大迫さんは去り際、私に何故神隠しの事件は受けないのかと問いかけた。
 私は、頭をかきながら、ボソボソと答えた。

「神隠しには三つあるんですよ。
 禁を犯してしまったもの。
 どうしようもなく運が悪くて、そうなってしまったもの。
 そして、招かれるべくして、招かれたもの。
 最初のは自業自得ですから自分で頑張ってもらいます。
 二番目は……なるようにしかならんでしょう。
 そして三番目は、手を出してはいけないんです。
 だから、私は神隠しの事件には関わりません」

 そう答えた私に、大迫さんは、「じゃあ、あなたが神隠しにあったなら?」と聞き、私が答えるより先に「いえ、聞いてもしょうがないですね」と言って、立ち去っていた。

 私はポツリと、「私は、待ってるんですよ」と呟いた。
by katuragi_k | 2008-03-12 07:33 | SSもどき
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