人気ブログランキング |

WIZな世界

「うわ、トロボー城だって……」
「バルタック・トレーディングポストとか……」

 なんだか疲れた声で街の案内板を見上げる男女が居た。
 一人は二十になるかならないかの若い男で、あまり特徴の無いのが特徴といえるような中肉中背。 一人は24-5の女、白い肌、黒い髪と瞳、真っ赤な唇に肉感的な体と絵にかいたような美女。 ただし、目元口元のパーツが大味で、そのバランスが少し微妙に愛嬌を加えていて、適当にくくった肩までの髪とあわせて、いたずら好きなチェシャ猫のような印象を与えている。
 男の名は『祭 司』
 女の名は『アリステア・クロウリー』
 二人は次元世界を暇つぶしに渡り歩いている旅人である。

「アリスねえ、ここでなにやろうっての?」

 司がじっとり曇って陰気な町を見渡し、相棒にして教師、そして旅の水先案内人で恋人は……うーんというアリステアに問いかけた。

「ふむん、司に手っ取り早く魔法でも覚えて貰おうとね」

 アッサリとした返答に、司は早速帰りたくなった。

「いや、無理だって、俺に魔法なんか使えないって」
「いやいや、司の世界の人間は押しなべて魔法使いやらへの素養は高い」
「はあ? 何、その超理論、初耳です」

 アリステアの思いがけない言葉に司の目が点になった。 司の世界ではゲーム・漫画・アニメ・映画の多岐に渡って魔法というものは存在してるが、あくまでも有ったらいいなの妄想でしかなく、それらを実際にふるえる存在は居ないのだ。 もし、素養があるのなら、一人や二人そういう存在が居てもいいのではないだろうか? まさか、「まりっく」やら「せろ」が?

「前にも言ったけど、司の世界で魔力に類するものは存在しない。
 それにも拘らず、魔法という物のイメージがあれほどハッキリと存在しているのは異常だよ。
 魔力の扱いで一番重要なのはイメージ。
 無いものをあるように想像する作業。
 それが司の世界ではテンプレートのように用意されている。
 それも目に見える形で……例えば治癒の魔術で光に包まれる、天使が現れて羽を舞わせながら傷を治す、どれもかなり有効なイメージだ。
 後は魔力を準備して、魔力の類を感じる感覚の訓練をすれば司も魔法使いになれる」

 アリステアの解説は、なんとも説得力のあるのか無いのか良く判らないものだったが、司には妙に魅力的なものだった。

「それじゃあ、何でこんな世界?
 もう少し判りやすい世界でも良かったんじゃ?」
「いや、下手にグラフィックの付いてるようなゲームに似た世界だと、司のイメージに影響が出る。
 ここなら下手なイメージは無いから、司の持っている自然なイメージが表に出るだろう」

 なるほど、文字情報だけで想像力を働かせろという事かと、司は無理やり納得した。

「さて、今の持ち金で買えるスクロールと魔法薬は片っ端から買おう!!」
「装備は?」
「重い鎧を着て戦いたい?」
「無理があるか……」
「ゲームみたいに、ただ着るだけでは防御力上がらないから。
 逆に地下に潜らないと戦闘用の魔法が使えないってゲームみたいな制約も無いわけだけど。
 まあ、いざという事になったら、ボクが守る。
 司に何かなんておこさせやしない」
「それもちょっと情けないけどね。
 ってことは、その辺で魔法使う?」
「その辺りの空き地に人払いをかければ良いさ」

 司は「なるほど」と、頷いてイカツイ武器が並ぶ店の奥に足を進めた。

「ふむ、さすがにゲームの初期状態みたいなことは無いね。
 色々と並んでいるね」
「あ、HALITOのスクロール見っけ。
 KATINOに……MOGREFって何の呪文だっけ?」
「身体強化で防御アップだったと……ごめん、自信が無い」
「DIOS、DIALKO、LATUMOFISの薬発見」
「司、その辺の不確定コーナーに近寄らないように」
「えっ? っておい、ワゴンセールで未鑑定品並べるなよ、危ないなあ」
「多分、高位のビショップってのが、そう居ないんだよ。
 それにゲームみたく店なら何でも鑑定できるって訳でもないんだろう。
 だから、コストの加減で怪しい物はそのまま売ってるんだよ」
「掘り出し物とかあるかな?」
「まあ、エセルなら鑑定出来るんじゃないかな?」
「ならさ、鑑定してお金稼げるかな?」
「なるほど、やってみようか、
 でもその前に掘り出し物はこちらで買い占めよう」

「……ロングソード+1、-1、+1、フレームタングってこれは銘が入っていますが?
 ……ブレストプレート-1、-2、-1、-1呪われすぎです。
 ……クラブ+2、+3、微妙過ぎます」
「エセルぶつぶつ言わない」
「単純作業は好きではありません」
「エセルさん、悪いね……また犬正宗買ってくるから」
「判りました、司の為にもう少しがんばりましょう」
「蔑ろにされている気がする」

「掘り出し物です。
 RING OF HEALINGとRING OF DEATHが混ざっていました。
 これらは魔力の誘導体に使えますが、どうしますか?」
「置いとこう。
 呪いの武器を売り飛ばせば、とりあえず買い物には困らないから」
「呪いの武器が売れるんだ」
「とりあえず、呪われてる奴も魔法がかかってるから、使い様で色々とね。
 技術さえあれば、それなりに買う連中も居る」
「ボクでも出来なくは無いけどね、魔力を引き出す手段と工房をどうにかしないとね」
「ああ、うちの世界って魔力が無いんだっけ」
by katuragi_k | 2008-01-28 22:58 | SSもどき
<< 前の事 1章 前編 >>