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ランサーお仕事シリーズ(仮)6

「おい、こんな所で落ち合うのかよ」

ガヤガヤと賑わうレストランを見ながら、ランサーがポツリとバゼットに溢した。

「どうも人気が無いと安心できないらしいわね。
 一応これだけ人目があれば、物騒な事にはならないと踏んでいるんでしょう」

「成る程な」

そんな物かと思いながら、ランサーはレストランに足を踏み入れた。

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ランサーとバゼットがレストランに入る少し前。

金髪の少女がランチクーポンを握り締め、戦場に在るかのような気合でバイキングの開始を待っている。 

「シロウ……あなたの犠牲は無駄にはしません」*1

本人が聞いたらなんと言うだろうって感じのセリフを吐きつつ、その視線はバイキング開始時間に近づくと共に並べられていく料理類に釘付け。 なんと言うか、色々シミュレーションしてるんだろうなと言った風情をかもし出している。 何故判るかといえば、恐らく無意識であろうが手元が勝手にナイフ・フォークで何か食べているようなパントマイムをゴソゴソ演じているからである。

そして11時。

―戦闘開始―(オープン・コンバット)

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「あれ?」

一哉が異変に気がついた。 若干では有るが、お客さんのテーブルががちゃついている。 ホールの担当が下げてくる皿の量と回転はサボっているような風ではないのだが……取りあえず一哉は自分でボツボツ下げる事にした。

「まただ」

何故かは判らないが、一哉の立っている出入り口付近のテーブルがまた、がちゃついている。 先程から見ている限り、お客様が無理矢理な量を持ってきたり皿を無闇に使っている訳でもない。 ただ、ホール係のウェイターが皿を下げている姿がこちらまでやってこないのだ。 下げ物の巡回はバックヤードの出入り口から出て、奥を回りこちらに回ってきてまた厨房のほうに消えていく感じで行っているのだが、どうも途中で持ちきれなくなって帰っているらしい。 新人でもあるまいし、有る程度以上の枚数の皿をは持てるはずのウェイターが途中で引き返していく。 もしや奥にたちの悪いオバちゃん軍団でも居るのかと思ったが、見た感じ落ち着いている。 

「おかしいなあ?」

各テーブルの上にある皿の枚数はおかしくは無い。 ふと見ると、ウェイターを呼び止める金髪の小柄な女の子が居た。 どうやらトレイをウェイターに渡して下げてくれと言っているらしい。 綺麗に食べていて好感が持てる。 きちんと食べてくれると妙に嬉しいのはサービスしている側の感想だが、どこか良い所のお嬢さんなのかもしれないなと一哉は思った。 だが、妙にウェイターの笑顔がこわばっている。 外人さんぽいから緊張しているのかなと思ったりもしたが、一言そのウェイターに言っておいたほうが良いかなと、下げ物を手に帰ってきたウェイターに呼びかける。 女の子は片付いたテーブルを立ち、またバイキングコーナーに向かっていった。 多分デザートでも取りに行ったのだろうと思い、一哉はウェイターを追いかけ裏手に回った。

「さっきの女の子に変な顔してたけど、何か有ったの?」

少々問い詰める感じで年上のウェイターに話しかける。

「えーとですね……話すより見てもらったほうが」

何か言いにくそうに、一哉を引張りバイキングコーナーへ向かうウェイター。 アレをと言われて見た先には、先程の女の子が立っている。 そしてそのトレイに乗っているのは、デザートでは無く……普通にまたメインから一揃えの料理。 パン、スープ、メイン、サラダ、先程下げた構成と皿の中身以外は同じだった。

「もしかして、あれで3回目?」

それならギョッとした顔も説明がつく。 一回下げて、また同じような量を食べてるのを見れば驚くだろう。 そしてまた今の光景は驚異という他は無いものだし。 だが、ウェイターの応えはもっととんでもない物だった。

「かれこれ……七回目になります。 今ので八順目ですね。
 きちんと毎回ダブらないようにしていますから、全制覇するつもりじゃないですかね」

アハハと乾いた笑いのウェイターが仕事に戻っていった。 そして、成る程さっきから皿が片付いてなかったのはそういうことかと一哉は理解した。 確かに皿は結構持てる。 だがそれは同じ種類の皿を重ねるからであって、トレイごと渡されればそうは持てない。 毎回、そんな物渡されてれば片付かんわなと……。 しかし、大体一通り持っていけばそれなりに腹は膨れる量になるはずなのだが、かれこれ八順目? どういう奴なんだとじっと見詰める一哉はとんでもない事に気がついた。

「ヤバイ……緊急事態だ」

そう呟いた一哉が気付いたもの。 それは、その金髪の女の子が髪を下ろした格好の、かの騎士王だと言う事。 そして、今入ってきた客が魔術師と英霊のペア。 つまりバゼットとランサーだという事。 そして、その二人が向かっている席に居る五人のビジネスマン風の連中が、揃って魔力の残り香を感じさせる事。 一哉は仕事がそっち関係じゃない事で油断していた自分に舌打ちし、ゼノビアに話さないととその姿を探した。

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*1「シロウ……あなたの犠牲は無駄にはしません」*1

深山商店街の福引において、衛宮士郎氏が新都のホテルのランチクーポンを引き当ててGET。 しかし、ペアチケットだった為に衛宮士郎氏が誰と行くかにおいて揉めた模様。 争奪戦に出遅れたセイバー嬢は、衛宮士郎氏のための一枚が誰の目からもフリーになっているのを察知。 主の危機と銀髪ロング、黒髪ツインテール、同セミロングの危険度、そしてバイキングフェアの誘惑を秤にかけ、英霊としてはかなりアレな答えを選択。 そしてその選択を行動に移す為、抗争勢力の只中に衛宮士郎氏を「ここはシロウが何とかしなければ」というセリフと共に突入させ、抗争が激化した間隙を縫ってセイバー嬢はチケットを確保し衛宮邸を脱出、ここに至る。 その後、衛宮士郎氏がどうなったかは不明。 しかし無事ではなさそうな結果が、今までの過去の例より導き出される事は想像に難くない。

ゆえにセイバー嬢から上記のセリフが出た模様。
by katuragi_k | 2004-10-28 21:46 | SSもどき
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