ところで、どうやって帰ろう?
「うぉあぁぁぁぁぁぁ」 「これで、われっらが祖国はぁああ」 「お姉さまあぁあああ」 某勇者パーティーはすごく盛り上がってたりしますが、僕は目一杯の疎外感を味わっています。 なんつうか、アイドル追っかけの友人に連れ込まれたコンサート会場のような……OTL 「さて、どうやって帰ろう」 (えーと、あなたは私が無理やり連れてきただけで、正式の呼ばれたわけではありませんのですから、楔になる私が居なくなった事ですし、何かしらの切っ掛けがあれば、さくっと戻れると思いますの) 「切っ掛けって?」 (退去の儀式を行うとか、誰かに向こうで呼ばれるとか?) 「退去させられるのが一番簡単かな?」 (ここの陣での召喚・退去はこの国の元王族が仕切っておりましたの。 先ほども私を呼びましたから、その人にお願いすれば良いと思いますの) 「なるほど正論」 とりあえず、オーロラさんには通訳というか翻訳をお願いしつつ、気が進まないけど勇者パーティにコンタクトを取ってみる事に。 「あー、もしもし。 そちらの勇者様方」 僕の呼びかけに雄叫びやら嗚咽で賑やかだった面々が、しんと静まり返る。 振り返り、じっとこちらを見つめる目が、雄弁に『そういえば、こいつはどうしよう』と語っている。 基本的には彼らに味方した存在だと認識して貰ってると思うのだが、なんとなく嫌な雰囲気を感じる。 彼らの中で恐らくリーダー格の女性……いや、ちょっと違うか? ああ、神輿ってとこかな?……が、悩ましげに表情を変えながら僕に向かっておずおずと切り出した。 「先ほどはご助力感謝いたします。 貴方様は一体?」 イッツ慇懃無礼。 割と警戒されてますね。 「私はこの世界とは別の世界から来たものです。 別に神の使いだという訳でもありません。 あの魔神を倒す能力をたまたま持っていただけの、あなた方と同じ人間です。 ただ、私をこの世界に遣わせた存在は、神といえるのかもしれませんが」 そう言って、「光の神よ」と祈る振りをしておく。 「そうでしたか。 貴方を遣わせた神に感謝を」 パーティ一行も僕の真似して祈る。 そして、何かを決意したのか厳しい顔になって。 「これから貴方はどうされるのですか?」ときた。 どうされるも何も帰りたいんだけどな……。 「この世界の先行きは気になりますが、それは私が関わるべきではないでしょう。 私は魔神の召喚にまぎれてこの世界にやってきました。 ですから、魔神の退去を行って貰えれば、この世界から私の世界へ戻る事が出来ます」 これでどうだ? 「判りました。 それではすぐに準備「ちょーっと待ーっていただこーうかー!!」」 な、何事? 帰れそうな様子だったのに邪魔するやつは誰だ? 無駄に通る甲高い声に続いて、がやがやと勇者パーティに十倍する人数の武装した連中が寺院の中に入って来た。 ちなみに全員黒尽くめ。 武装も鎧も装束も、なんとなく冒険者といった風情の実用本位な勇者パーティの物とは違い、軍隊といってよい揃った物である。 その先頭に立つのは今の奇声を発した男だろうか、一人だけ軽装で着衣も金糸の装飾の入ったよさげな物を着ている。 「マ、マグニエス卿!!」 「イシェーラ嬢!? な、なーんと、なーーんと余計な事を!! まーさーか、魔神を倒してしまうとは……まったく、まったくまったーーく、余計な事をしてくださいまーしたぁ!!」 誰? (マグニエスといえば、この国に攻められて、その後やり返した隣国の貴族だったと思いますの) ああ、臥薪嘗胆の国の人? (ですの) 「余計な事とはどういうことですか!! マグニエス卿!!」 「魔神など倒したところでこの国は救われないということでーすよ。 むーしーろ、ぎゃくっ!! まーったーっくのぎゃくっ!! 魔神のお陰でこの国は救われていたーってーのですよ!!」 「????」 あーあ、言っちゃった。 てか? なんで、あの人は本当の話を知ってるの? (多分ですけどあの人、この国の王族の血を引いてるみたいですの。 この国があちらさんを攻めた時のオイタの名残みたいですけど、その時に色々とあちらさんに漏れてたんじゃないかと思いますの) 「本当に臥薪嘗胆だな。 気が長いというか、しつこいと言うか、ある意味立派か……」 「まーったく!! 民の為にと、さーっさと生贄になってくれるなーらばー、こちらの手を汚さーずにスッキーリと片付いてくれると思っていたのでーすが!! なーにが、この国の元王族として最後の勤めを果たしたーいでーすかぁ!! もとよりー、狂王の末裔などに期待はしてませーんでしたがー……せっかくのわたーしの心づーくしを、無駄にしてくーれましたー!! ほんっとーに、余計な事をしてくれるもんでーす。 こんなことなーらば……えーーい、いまさら言ってもしょうがないでーす」 ど、どうなるんだ? 「このうーえは!!」 この上は?? 「無い頭でも結構!! この国を救う手立てを考える足しにでもなって貰いましょう!! そこの神の使いとやらも!! 異世界びとなら異世界知識でズバーンとこの国救ってみなさい!!」 うわ、普通に立派なんだなこの人。
by katuragi_k
| 2007-01-22 22:29
| SSもどき
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