「寝ているところをすまないが」
「はい?」 寝ながら意識だけで飛び起きるという、珍しいことをしてしまった。 ―――あくまでも黒猫――― 「ふむん……なかなか寝起きが良いようだ。 まず君には礼を言っておこう。 私は昼間、君に救われたものだ」 あー……頬をつねってみる。 …… …… …… うん、痛くない。 これは夢だな。 OK……お休み。 「無理だと思うが」 余計な心配はハローグッバイ。 どういう意味かは自分でも良く判らないが、何故か今は最適な言葉に思えるのでOKだ。 「君は順応性が高いようにみえて頑固だな」 なんとなく呆れられている気がする。 だがOKだ。 それが僕だから。 よし、ぐぐっと睡眠でグーだ……本当に意味がわからんのだが、今はこれが最適な言葉だと判断している自分が居る。 「なぜだろう? 眠れない」 「まあ、君はもとより眠っているのだから。 それに今はまだ脳が浅い眠りに向かい始めた辺りだろう。 これから少しの間は眠りは浅く、意識は起きている頃合いだからな、 完全に意識を閉じるのは難しかろう」 夢の中で難しいことを言われると頭が痛くなる。 痛くないけど。 ……ま、いいや。 で、今になって気がついたけど……なんで、そんなに豪華な寝床に居やがりますか? こちらは素の万年床ですよ。 あちらはどうやってこの部屋に入ってんだよと疑問ぶつけたくなるほどにデカイベッド。 天蓋なんぞついてる上に、そこに居るやつがまた金髪黒尽くめの偉そうな感じの超美形。 夢じゃなくて出会っているなら、引くかビビルか呆気に取られるか頬を染めようもんな感じの美形。 形容するならどこぞの神様にでも愛された王子様? そんな感じ。 「いや、なかなか鋭いが……神なぞに愛された覚えは無いな」 ほー、夢すげー。 喋ってないのに通じたよ。 「夢とはそんなものだよ」 さいですか。 「で? 僕は礼を言われる筋合いは思い当たらないんだけども」 確か無い筈。 変な宗教の勧誘じゃあるまいな。 「ふむ、そう言われるのは少々寂しいな。 私にしてみれば如何なる神の引き合わせだろうかと、 思わず背いたはずの主にまで感謝しそうになったものだが」 大層な話だとおもふ。 「じゃあ、それは置いといて別の事を聞こう……あんたは誰?」 僕がそう聞くと、美形は待ってましたとばかりに寝床から立ち上がってバサリとマントを一振るい。 もし僕が女だったらヤバイ事を口走っちゃいそうな微笑を浮かべながら高らかと名乗りを上げた。 「私の名はシトリー。 魔界に有りて70の軍団を支配する魔の王子にして、ソロモン72霊の1なり!!」 おー、ぱちぱちぱちぱち。 僕の拍手にシトリーは、満足げに一礼をした。 「あんたの事は判った。 でも余計に心当たりが無いなぁ」 ラノベは結構読むので、ソロモン72霊ってのは聞いたことがある。 個別には知らんけど……でも70軍団ってーと大したもんな気がする。 はっきり言ってそんなのとお知り合いになった覚えは無い。 「大体、今日有った事といえば……」 ハートブレイク……しくしくしくしく。 激しく凹んだ。
by katuragi_k
| 2006-11-29 21:15
| あくまでも黒猫
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