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ファイアスターター2

真夜中、けたたましい警報が研究施設を静寂から呼び覚ました。
枕が替わって寝付けなかった俺は飛び起きてまわりを見回す。
淡いベージュで統一された、なんだか病室じみたゲストルームには特に異常は見られないが、ベッドボードのアラームスピーカーからは今も警報が鳴り響いている。

「どうせなら状況を知らせろよな」

役に立たない煩いだけのアラームを止めて、とにかく表に出る事にした。
隣にはランサーが居る筈、あいつなら何か掴んでそうだ。

オートロックの電子錠を開けて表に……表に……。

「開かない」

マジですか。
開錠のスイッチ押しても赤いロック表示のまま。
点滅してもそのまま赤に戻って緑のランプがつかない。
ただ、故障にしちゃ一旦は何処かと通信してるような挙動……点滅の感じがそう取れる気がする。
なんというか、閉じ込められたのかな?

「八姫、ランサーの所に行ってくれ」

ミミッと出てきた蜘蛛が壁に向かって進み、そのまま通り抜けて行った。
数秒して蜘蛛は戻ってきたがランサーは居なかったらしい。
多分、状況をつかみに行ったんだろう。
これは参ったね。
こんな事なら封印掛けるんじゃなかったかな。
今回は腐っても協会関係の研究施設に近寄るって事で、皆には出て来ないようにして貰っている。
いきなり検査させられたので正解だったんだけど、こういう状況でエスさんズすら呼べないのは心細い限りだ。
封印自体はいつでも外せるけど、もし何かつかまれたら厄介な事この上ない。
今はとりあえずの危険は無い事だし、自前で何とかするべしか。

「何にしても様子が知りたいな」

まず人間相手なら、千姫だけ居れば数人が武装してても殲滅できる。
って事で蛇さんズと蜘蛛さんにその辺を探って貰いましょう。
では、と横になって寝なおす。
流石に目を借りる時はじっと横になってるのが楽だしね。
千姫には警戒して貰っておく。
この辺の自立行動が下手な使い魔とは違うとこ。

さて、覚えてる間取りを思い出す。
この部屋は同じ作りが五つ並んでる一番端で北向きにドアがある。
ドアを出ると西に向かって通路、先はどん詰まりで東は突き当たりにエレベーターそして左右に廊下。
南に向くと非常階段で北は通路が伸びている。
北に進み西側のドアを開けると会議室というかミーティングルームが有る。

地下二階

┌────────┤ | 
|            | |
| 会議室       |
|            │ |
├────────┘ ├──┐
|                 EL|
├─────┬─┐   ├──┘
|ゲスト客室 |  │   |
|×五室   | 非常階段へ
└─────┘ 

こんな感じかな? ずれてたらごめん。
とにかく各部屋を回るかな。
蜘蛛さんが壁を抜けながら進んで行く。
ランサー居ない。
その向こうも居ない。
そのまた次も居ない。
……まあ、元々此処は男性陣だけしか居なかったからな。

あ、ちょっと気になったんで八姫にドアの開閉スイッチを押させてみる。
数瞬赤い表示が瞬いて緑に変わり、ロックが外れた音がした。
なるほど、この部屋はロックが掛かっていないのか。
ついでに全部屋押して回る。
奥の三部屋が開いた。
俺とランサーの部屋はエラーがでる。
不審どころじゃないな。
偶然にしてはなあ、なんというか協会がらみな俺達を隔離するつもりだったのかなとか思ってしまう。

さて、先行させてた白蛇さんに視点を移す。
蜘蛛さんはゲストルームの天井を抜けさせて上の階へと調査続行。
白蛇さんは非常階段を上って行かせたのだが、道中で煙だとか火災の熱だとかは感じなかったそう。
一体、あの警報はなんだったんだ?
三階の表に出てみるかな。
階段室の上に登って壁を抜ける。
いや、抜けようとした……だが、コンクリートの壁を抜けて外に出る事が出来ない。
結界か?
壁面の壁にも挑戦してみるが、同様の結果。
ビル内部には及ばされていないが、外部に出ようとすると阻まれる。

「なんだか、厄介な話になってきたぞ」

白蛇さんは階段室から出て三階で待機しといてもらうかな。

今度は黒蛇さんへチェンジする。
会議室は異常なし。
会議室の向こうに進むと清掃関係の道具が置いてある。
特に部屋や何処かに繋がっている様子はない。
機材の搬入用だろうか、もう一台エレベーターが有ったくらい。
ふむ、会議室前の廊下を監視させておけば誰かが降りてきても確認できるな。
よし黒蛇さんには監視してもらおう。
何か変化があったら知らせるのだぞ。

さて、蜘蛛さんにチェンジ……忙しいなあ。
このフロアには女性陣が居る筈。
覗きになっちゃうが、勘弁してくれよ。
端から見ていく事にする。
西の端……ベッドメイクされたまま、荷物も無いので此処は使ってないのだろう。
多分、東から詰めて使ってると思うが。
次の部屋もやはり空。
次、ボストンバッグに聖書……シスターの部屋らしい。
だが、当人は居ないようだ。
おっと、ドアを開けてみよう。
ロックは何事も無く開いた。
残りの二部屋、女子高生とお姉さんで間違い無さそうだが、やはり居ない。
ドアは開いたので避難したのだろうか。
そのまま会議室とその向こうを調べる。
異常は無い。
其処まで調べてちょっと疲れてきた。 皆を戻す事にする。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

備え付けの冷蔵庫を漁る。
ビールにウイスキーにコーラ、ジュース、スポーツドリンク……なんかホテルっぽいラインナップだ。
ミネラルウォーターもあるな。
ただ食物が無いのは寂しい。

これからの事を考えると、どうにかしてランサーと合流したい。
うちの子達では壁抜けして遠出すると流石に距離が厳しい。
真横の階段室ならテッペンまでいけるが、それ以外の場所だと一階までは厳しい感じだ。
地下階には異常が無かった以上、地上階に何かが起こっていると思われる。
しかも結界なんて物が張られているし……これは尋常な状況じゃ無い。

「まったく、我ながらろくでもない感はよく当たるもんだ」

とにかく酒は拙いが、集中力を復活させるにも糖分が欲しい。
コーラをポットの湯で割って、炭酸飛ばして飲む。
爽快感は無いが十分程して頭が回りだしてきた気がする。
気分だけかもしれないけど。
ポケットシュガーとコーヒーとかも置いてあるからそれもキープしておこう。

さて外に出たいが、ドアが開かないとなあ。
流石に人を倒せる力があっても普通に金属ドアをどうにかするのはかなり厳しい。
壁を叩く。
ゴッゴッと重い音……コンクリだな。
ドアを叩くと、こちらも中まで詰まってるような感じの音がする。
たぶん発泡剤か何かなんだろうけど、扉自体の響きの感じからするとかなり厚みがあるな。
次にベッド脇の壁……コンコン。
何か軽い音だ。

蹴る!!

たわんだ所を見るとそれほど厚い壁でも無さそうだ。
更に蹴る!! モコッと凹んだ、二十㎜くらいのボードみたいだな。
これなら硬い物で傷をつけ、其処に力を加えれば割れると思う。

「千姫!!」

足槍で壁に円を描くように穴を開けていく。
一周した所で、ドロップキック!!
破片をめくり中を覗くと隣の部屋の壁が見える。
どうやら元は大きいスペースだったのを分けたんだな。
これなら鍵の開いてる部屋までぶち壊していける。
一メートルくらいの穴を開けると、向こう側の壁にも蹴りを入れていく。
30分ほど掛けて二部屋またぎ、やっとの事で廊下に出た。

「さて、どうすっかね」

非常用の電球だけなのか、薄暗い廊下の先はなんだか不幸が待っているようで嫌な感じだった。
まあ、大して外れちゃ居ないのは直ぐ後に判る事だったわけだが。
by katuragi_k | 2004-10-15 21:36 | SSもどき
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