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練習

れんしゅう2



「何が迷惑ですってぇえええ!!!」

「うわぁ、口に出てましたかぁ!!
 じゃなくって顔近い顔近い!!
 胸倉掴むのカンベンしてください!!
 ついでにその笑い怖いですーーー!!」

 どうもチラッと思った事を口走っていたらしく、遠坂さんの右腕一本に振り回されています。 このまま明日の朝日が拝めるかドキドキです。

「ああ、誰かヘルプ」

 この事態を何とかしてくれと、神に救いを求めたら……

「ここは神の家ではないが、救いを求める者が伸ばした手を取るに吝かではない。
 告げたい罪があるのなら聞こうでは無いか」

 なんか違うのが来ました。



 ――あかいあくまの直談判 2――



 
「言峰「綺礼?」神父?」

 お互いの言葉を聞きとがめて、顔を見合わせる僕と遠坂さん。
 遠坂さんは僕の胸倉を掴んでいた手を離し、僕はストンとソファに腰が落ちた。

「珍しい事もあるものだな。
 あの凛が私の勧めに従うとは。
 それにしても寄木一哉、随分と楽しそうではないか」

 クツクツと笑う男。
 玄関に佇む悠然とした体躯、軽く広げた両の手に懐の深さを感じる。
 やわらかい笑みは慈悲の徳を見て取れ、底の見えない目の光は強い意志を感じさせる。
 だのに、なぜか不吉さがぬぐえない男。
 なるほど、遠坂さんの知り合いはこいつか……OTL

「言峰神父、どこをどう見たら楽しげに見えるんですかね」

 不機嫌さを隠さずに神父をねめつける。

「いやいや、身内の贔屓目を省いても凛の器量は悪くない。
 それとの二人きりの逢瀬。
 中々に得がたい時間だったのではないか」

 ……ものは言いようだ。

「僕にも選ぶ権利はあると」

「何か言った?」

「いえ、何でもありません」

 ……しくしくしくしく

「で、綺礼は何を?」

「私は頼まれ物の受け取りだ」

 言峰神父はこちらを向いて、「品物が揃ったと連絡を貰ったが」と。
 僕はひとつ息を大きく吐いて立ち上がると、玄関を見ないようにして部屋の奥から細長いアタッシュを担ぎ出す。

「出来はどうかね?」

 珍しくマンウォッチング以外で楽しげな風の言峰神父に軽く怖気を感じながら、僕はアタッシュを開け並ぶ中身を見せる。

「とりあえず、こいつが一番ましですね」

 アタッシュの中にある3本のうち、一番自信のあるものを取り出す。

「ほう」「へえ」

 ひとつは興味深そうな、ひとつは感心したような声。
 視線を集めた品物は刀身60センチ程の両刃の小剣。
 身幅は割りと太く、かなりゴツイ。
 刃は引いてあるのであまり鋭い感じは受けないが、鋼の塊の鈍い光はそこそこ以上に非現実的だ。

「これって、儀礼刀じゃ無いわよね」

 先程までの不機嫌さは何処へやら。 遠坂さんが無骨なそれに興味津々。

「使えなくは無いですけど……」

 そう言って、僕は言峰神父にちらりと視線を向け、神父の軽い頷きを了解と取り、遠坂さんにどうぞと渡す。

「まあ、凛には話しても問題あるまい」

 ためつすがめつする遠坂さんに、「元はこれなんですけどね」と、奥からもう一本の剣を取ってきて見せる。
 持つだけでバランスの悪さを感じる品物。
 遠坂さんが呆れて見やるそれの名は『黒鍵』
 魔術関連の物ではなく、立派に教会の品である。

「綺礼も綺礼だけど、受ける方も受ける方ね」

「いや、面白そうだったんでつい」

 遠坂さんから剣を受け取ってケースに詰めなおし、言峰神父に渡す。

「それでは、待ち合わせがあるので失礼する」

 現れたときと同じく唐突に立ち去る神父だった。






「で、私の件はどうなるのかしら?」

 そういえば、まだ何も解決してなかったのだった。





・黒鍵改
 本来は使い捨てに近い、数撃つタイプの投擲礼装な黒鍵を教会の人間以外がその秘蹟による対霊概念の威力をなんとか使えないかなーと思った誰かさんに依頼されて試作したもの。
 誰かさんは言峰さんの知り合いらしいが何にも考えて無いので気にしてはいけない。
 材料は、戦闘で破損した黒鍵を誰かがガメタ物。
 その中でも、死者に止めをくれて折れた物が一番良かったぽい。
 因みに黒鍵の概念自体を魔術で再現やら強化やらどうのこうのとできなかった為、黒鍵をまんま埋め込んである。
 剣としてのバランスと強度を取るように肉付けした後、肉付け部に魔術を乗せやすく処理をしているだけ。
 リーチや使用法、重量などに制限があるものの、魔術を乗せれば威力だけなら数倍に上がる。
 とはいえ、何処まで行っても趣味の品でしかない。

とかなことを考えてみる。
by katuragi_k | 2006-05-22 05:47 | SSもどき
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