「もう、あの槍馬鹿ー、ゼノビアさんを一体何処まで連れてったんだー!!」
パルミラさんとゼノビアさんに向けての感覚で何処の方面かは判る。 ただ、距離が判らんのだ……こうしてみると、新都も広い。 しかも血が足りんのか、走る衝撃で頭がクランクランする。 能率だとか言い出せば、少しは休んだ方が良いんだろうけどな。 アインツベルン関係にとっつかまってるゼノビアさんを放って置けるわけが無い。 ともかく泣かれるのは俺も痛いんだ。 「さっさと見つけて連れ戻す。 ……頼むぞー。 バーサーカーなんか居るなよ……」 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 「この辺は……あんまり来た事が無いな」 新都の中でも駅から少し離れた場所。 事務所やテナントの入ってるビルとは少々趣が違う。 外資の支社が丸々立ってたりする一角。 恐らく、細かい所は俺の世界と違う事も多々あるだろうが、今はそんな事は関係ない。 この辺りに来て、やっとこさゼノビアさんを感じる方向が変化しだした。 ビルの集まってる区画を回ると360度変化する。 つまりはこの区画のどっかに居るはずだ。 それならと、近くのビルにコッソリ入って高い所から感じる向きのあたりをつけていく。 大体4箇所ほど回ったところで、ちょっと古めのビルに交点が集まっている事を確認した。 地図を見ると……あんまり聞いた事が無い会社名だった。 この世界では有名なのかもしれないが、俺にはなじみが無い。 まあ、アインツベルンか協会関係の表向きの顔なんだろうし、あんまり派手に名前が売れてるのもアレなんだろうけど。 「さて、どうやって入るかな?」 正面は受付のある玄関ホール……やたらとガランとしていて、人は少ない。 ホールは妙な形のオブジェが据えてあるだけで、受付とウロウロしている警備の人間から隠れてどうこうするのは厳しそうだ。 次に、隣の駐車場から裏手が見えるのでそちらに回ってみる。 するとビル両端の角に、非常階段だろうか? 各フロアにぽつぽつと踊り場らしき空間が見えた。 その下をずっと追っていくと、ペンキ塗りの鉄扉。 どうやら駐車場に面した部分に非常階段の出口が在るようだ。 恐らく一方通行のパニックドアだろうけど、アラームさえなければ蛇さんなりに開けて貰うのは可能だろう。 「で、アラームの確認という事だけども……」 と言ってると、鉄扉が開いた。 ぞろぞろと出てきたのは電気屋さん?だろうか。 作業服の一団はケーブルやら脚立やら担いで車に向かっていく。 行き先の車はなんちゃらビルメンテと書いてある……ふむ、やはり電気屋の類だな。 その中のリーダーっぽい人がなんかのチェックと報告書だろう書類を書き込んでいる。 そして、傍らの下っ端っぽい兄ちゃんに何か言ってる。 「……に作業確認貰って来い。 あと、報知器戻して結構ですってな」 ほーう、良い事を聞いた。 今のうちに入り込む事にしよう。 見ると、鉄扉には未だドア止めが掛かっていた。 「こうも調子が良いのも日頃の行いかね」 誰も戻って来ない内に上階に上がる。 階段は小さな蛍光灯がまばらに付いてるだけで暗いが、踊り場に出ると外からの光が入るので、そう見通しは悪くない。 おっと、靴は脱いでおこう。 足音を聞き咎められる事はなさそうな気もするが、やりすぎる事は無い。 「でも……寒いけど……な」 そろそろと階段を上っていく。 かれこれ十階、ビルの半分くらいまで上がったが、未だ気配は上にある。 まさか最上階か? この際、屋上まで上がって機械室辺りにドアの開いてる所が無いか見るのも良いかも知れない。 「23階……屋上」 結局、上がりきっちゃったよ。 流石にここでは下に気配があるが、実は居ると確認した所は最上階だった。 ここには誰も来るとは思ってないのか、メンテの人が適当なのか非常階段への入口にはドア止めが噛ませてあった。 ゴンゴンと空調だの高架水槽に水道汲み上げてるポンプだのエレベーターのモーターだのの音が響く室内。 注意しながら進むが、やはりこんな所に防犯設備は無かった。 下で視たビルの構造を考える。 入り口入ってど真ん中にエレベーターが八基。 四基づつ向かい合わせだった。 だが、ここには九基のモーターがあったりする。 つまり、四基と五基 恐らく多い方の一つは清掃か何かに使ってるんだろう。 その対面のスペースは非常階段らしい。 となると、各フロアは真ん中にエレベーターを置いたエの字か横にしたデジタルの8の字に通路が走っていると思う。 そうだな、真ん中の非常階段は通常の移動にも使われてるだろう。 そこなら防犯設備も先ず無い筈……そこから下のフロアに入って、屋上経由の外側の非常階段から脱出。 出る時ならアラームが鳴っても、あまり問題は無いだろう。 「よし、プランは決まった……あとは出たとこ勝負な」 ――――――――――――――――――――――――――――― 「ふむ、どうやら無事にこちらに向かっているようだな」 黒猫がポツリと呟いた。 隣にはゼノビアが意識を失ったまま寝かされている、 その向こうにもゼノビアと同じような……恐らくホムンクルスだろう女性が眠っている。 他には人気は無く、今の所直ぐに危険がどうこうという事は無かろうとパルミラは思った。 それよりも先程の感覚。 状況は掴めなかったが、主たる少年から生命力ないしは活力と言った物がゴッソリと消耗していた。 恐らくは血を失ったのだろうが、一時はどうなる事かと。 今こうしてこちらに向かっている所を見ると、何とか無事に居るようだが。 黒猫はぴくぴくとひげを震わせ、何か気に入らないようにそわそわと首を巡らす。 「なんなのだ、この言いようも無い胸騒ぎは……ええい気にいらん」 黒猫は吐き捨てると、ゼノビアの傍に戻りガシガシと前足で顔を洗い始めた。 ―――――――――――――――――――――――――――――― 余計なキャラを増やさないように修正。 メイアさんの独り言も消し。 どうも熱が出てるので頭が回らない。 今でも書ききれてないのにこれ以上増やすのは首を絞めてるようなものかと……。 この決断がFAKEの最初で出来てれば、もっとすっきりしてた気がする。 今はとにかくいきなりキャラを増やすんじゃなくて、今居る人と本編の人を動かそう。
by katuragi_k
| 2005-01-24 18:18
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