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FAKE_TAKE2(6)

「まさか、こっちも記憶喪失だなんて言わないでしょうね」

ぐっ、遠坂さんに先に言われてしまった。
俺はサーヴァントじゃないのはバレバレ。
ゼノビアさんも調べられたらホムンクルスだって言う位はすぐばれるだろう。
アインツベルンの出だとかも場合によっては……。
そうなればアインツベルンの回し者とか言われても反論できん。
どうしたものか。
実は、別の世界からやってきましたとか言ったもんなら……殺されかねない気がする。
逆に信じられても脳みそ開けられて調べられかねんし。
ポクポク
……
ポクポク
……
ポクポク
……
ポクポク
……
チーン (人) 南無ー

「実は、俺は……」

「なに?」

「受肉した元英霊なんですー!! とか言ったら信じます?」

「何て事!! じゃあ、あなたは聖杯戦争の勝利者!!
 って、そんな事信じる訳ないでしょう。
 真面目に答える気が無いなら……」

バッサリと否定された。
どうしろと……こうなりゃためしにホントっぽい事を言ってみるか。
信じないならサクッと否定してくれそうだし。
万が一信じてくれたら……んなわきゃ無いか。
とにかく時間を稼ごう。

「じ、じゃあ、魔法使いを名乗る存在の係累が起こした不祥事に巻き込まれて、
 その後始末をしている魔法使いに、この世界に放り込まれた可哀想な被害者ってのは?」

言っちゃった。
さて、これで遠坂さんが途惑ってる間に言い訳を!!

「それ、本気で言ってる?」

遠坂さんの気配が変わった。
バカな事を言ってるんじゃないわよといった風な先程の様子とまるで違う。
秘めていた何かを暴かれたような、クリティカルな何かに触れてしまったような。
これはどうも、考えてたシナリオと違ってしまった気がする。

「答えなさい」

ゆらりと一歩こちらに踏み出した遠坂さんの左手に魔力の気配。
チラリと目をやると見事に刻印が起動している。
恐らく答え次第では……いや、何も答えなかったとしても。
遠坂さんはただでは済ませる気は無いだろうな。

「フ、その答えには私も興味がある」

アーチャーが壁にもたれたまま、ニヤリ笑いでこちらにプレッシャーをかけて来やがる。

「かずやさん」

ゼノビアさんがすっと俺の前に出ようとする。

「駄目だよ」

遠坂さんに背を向けるのは怖いが、ゼノビアさんの肩を押さえて後ろに戻す。
向き直ると、遠坂さんがなんとも言えない顔をしていた。

「答えは?」

最後通牒が発せられた。

――――――――――――――――――――――――――

万事休すかな。
戻ってきた魔力を全部突っ込んでも、お姉さん方を目覚めさせるには到るまい。
恐らくは、蛇さん虫さんズのうちの一つが関の山だろう。
仕方ない……ダメモトでやれるだけやっておくか。
半ば諦め半分で己の存在を裡に触れる。

――ふむ、何かややこしい事になっているようだな。

話し掛けて来る意識(声)が一つ。
こいつ、そういえば居たんだっけな。
むう、こうなれば藁にも縋るべし。

――藁とは、それは酷い言いようだな主よ。

反論してきやがったよ。
たしか、あの存在は杖みたいな物だとか言ってたな。
だとすると、何らかの特化礼装か?
それともエスみたいな増幅系の汎用礼装か。
意識なんか持たせている所を見ると安全装置付きのヤバゲな物という気もするのだが。
直で聞いた方が早いな。

お前は何かできるのか?そう、裡に問いかけてみた。

――特に、一回限りで込められている第二魔法以外に何も持っては居ない。 魔術師の杖としては、そう目新しい物では無いな。 強いて言えば、聖杯クラスの魔力の流入でも耐え切れるという事くらいか。

それって凄いのでは無いだろうか……。

――ふ、心得違いをしてはいけないぞ主よ。力を通せるという事と、それだけの力を発揮できるという事は違う。主が使える力を私を使って発揮したとしても大して変わりはあるまい。それなりの象徴として使えばある程度の増幅は可能だろうが、それはそれなりの礼装を準備すれば事足りる。私でなければ駄目だという状況は、汝が堪えられない程の魔力の源を制御し放たねばならないと言う時くらいであろうよ。私をバイパスに使えば、そのままでは体の耐久を超えてしまう程の力も問題なく扱える。だが、そこまでの力。喩えダメージが無くても制御など主の力ではかなうまい。ただ垂れ流すだけの力など、無駄以外の何物でもない。

一気に語りやがって……つまりは、扱える力の上限が無いと言っても、制御するのは俺だから手に余る力には意味が無いって訳ね。結局は埋められている魔法自体の機構を覗けば普通の礼装と差は無いって事か。
ふう、希望は消えたか……。

――ところで主よ、この状況を何とかしたいのではなかったのか?

出来たらしてるよ。

――では、私に名前を頂きたい。

こんな時に、名前だってか……というか、名前無いのか?

――あの御仁は鷹揚でな。

何か不満げな言い方をするのを聞くと、何か悪い奴でもなさそうな気がしてくる。
名前か、名前ね。
そういや、俺ってあんまりネーミングセンスは良くないのだ。
アインツベルンの連中はかっこよさそうな名前を付ける気がするなあ。
単にあちらの言葉の響きのせいかもしれないけど。
ゼノビアさんは大層な名前だったりするしな。
たしかパルミラの女王だか、女皇帝だか。

――ふむ、良かろう。

なにが?

――パルミラと名を頂こう。

勝手に決めてるし。 あんまり杖って感じじゃないぞ。
なんだか女性っぽい響きだし。

――問題ない。 私はもとより杖ではない。

もう、好きにしてくれていいよ。
じゃあパルミラさん。 何とか出来るなら何とかしてくれないか?

――承知した。

マジですか? 一体何をするのだろうか、ドキドキだが、こうなれば俺には祈るしかなかった。
by katuragi_k | 2004-12-10 01:16 | SSもどき
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