戦闘
彼女の手から、中央部に燐光を灯した闇が撒き散らされた。 私がその目で追える程度のスピードに対して、観察しようと色気を出した瞬間、左手が勝手に動き、闇の通る軌道を薙いだ。 「白丸、黒丸? 一体!?」 勝手に動いた左手。 私が蛇達に何事かあったのかと思うまもなく、ジャッという、なんともいえない音がし、闇が弾けた。 その音を喩えるなら、工業用サンドブラストの作動音だろうか。 どうやら、見える以上に闇の塊の大きさは大きいようだった。 私が中央部の燐光につられて避けたつもりになっていたら、夜に紛れたその外周に削られていた。 ちなみに弾いた塊の行く先では、立木の幹に荒くやすられたような擦過痕が残っているのが見えた。 「け、結構しゃれにならない威力ですね。 どういう理屈で、闇を固めると物理的な威力のある粒子になるんだか。 えーーい、忌々しい」 思わず、ボヤキが漏れた。 その間も辺りでジャリジャリガシガシと破砕音が続く。 私は近くしか把握できていないが、彼女の攻撃範囲は相当広いらしい。 「まったく、どれだけの数の弾を、 弾数制限とか、一球入魂とか言う言葉は知りませんかっ?」 私は、彼女が掴みかかってくる所に、けん制を撃ち込んで、護符叩き込んで泣かせるつもりでしたが、彼女に飛び道具があるとか、こちらよりも射程が長いとかは想定外ですね。 「ねえ、その鉄砲は飾りなの?」 私のボヤキを見通したかのようにそんな事を仰るルーミア嬢。 「ぐっ……痛い所を突きますね。 撃ちたいのは山々ですが……」 私の持っている拳銃は、出来のいいモデルガンを改造した似非拳銃。 実包は打てず、燃焼ガスで溶かした流体を、ガスの勢いで飛ばすもの。 飛ばす物のレシピは塩、銀、丹、沙……俗に言う魔よけ。 射程は5-6メートルで飛散範囲が2メートルほど。 半実体化した餓鬼等には覿面に効果が出ますが……。 彼女ほどの実体を持つ相手に利くか……痛みには弱いようですから、けん制にはなると思っていつも持っていたのですが。 近いのは弾き、間に合うのは避けつつ、私は少しずつ明かりのある所へ移動する。 彼女が闇を武器化しているせいか、いつの間にか、空には月が明るさを取り戻していた。 「逃げるばかりだと弾幕ごっこにならないわ」 ゆっくりと散歩でもするように、歩きながら私の後を追う彼女。 「ごっこなんていう可愛いものですかこれが!!」 私は転げるように走るものの、余計な動きのせいで距離を稼げていない。 それでも何とか、祖父の家の近くまで逃げ延び、家の影に入って彼女を待ち伏せた。 足音を頼りにタイミングを計る……。 「?」 足音がしない。 途端、背中に悪寒が走った。 前に飛び込む様に跳ねて、前転して受身。 振り返った先に闇が打ち込まれていた。 「上?」 唖然とする私に声が振ってきた。 「……残念」 とは言いつつも、私が避けたことで楽しみが続くとでも言わんばかりの笑みが、見下ろす彼女の口元に浮かんでいた。 「冗談……」 彼女は飛んでいた。 「さあ、早く泣かせてみて」
by katuragi_k
| 2008-04-02 21:02
| SSもどき
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